投資信託を購入する際には、様々な選択基準があります。今回は、その中でも重要な為替ヘッジについて說明していきます。
為替ヘッジとは、他国の通貨で運用する必要がある投資信託(s&p連動, nasdaq連動など)を購入する際に重要な項目です。
今回は、投資信託を選ぶ上での為替ヘッジの目的、そしてメリット・デメリットを知りたいという方のために記事を書きました。
これを理解すれば、投資信託への理解も深まりますし為替に関する知識も深まりますので、興味がある方は是非読んでみて下さい!
それでは、始めていきましょう。
為替ヘッジの目的
為替ヘッジとは、通貨間で起こる為替変動リスクを抑えるために行う取引です。
なぜ通貨間で起こる為替変動リスクを抑える必要があるのでしょうか?
それは運用利益が為替の変動によって上下することがあるからです。
例として1ドル=100円の時に、為替ヘッジなしのドル建て投資信託10000円を運用して 5% の利益が得られたとします。しかし、為替変動で運用開始時よりも10%も円高(1ドル=90円)となった場合の利益の計算は以下のようになります。
※ドル建てとは、運用する時に通貨をドルに変えて運用することを言います。
投資信託の利益
100ドル(1ドル=100円) × 1.05 (5%の利益を計算) = 105ドル → 5%の利益(ドルベース)
投資信託の利益を円に換金
105ドル × 90円 = 9450円
よって
9450 ÷ 10000 × 100 = 94.5% → 5.5%の損失(円ベース)
となります。投資信託の利益はドルベースで+5%だったにも関わらず、円高になってしまったがゆえに、円ベースで利益を計算すると- 5.5%になってしまっています。
しかし、逆に+10%の円安(1ドル=110円)が起きた場合を計算してみると
投資信託の利益を円に換金
105ドル × 110円 = 11550円
よって
11550 ÷ 10000 × 100 = 115.5% → 15.5%の利益(円ベース)
となり、投資信託での利益が円安により大きくなっています。
なので、通貨間での為替変動は、円高になった際にはマイナスに働くが、円安になった際にはプラスに働くことになり、投資をする上ではリスクとなります。
このように外貨建ての投資信託を運用する上では、以下のように株価の変動リスクと為替変動リスクがありますが、為替ヘッジを行っている投資信託を選ぶことで以下のようにに「為替変動リスク」をなくすことができ、リスクの低い運用を可能とします。
為替ヘッジの手数料
続いて、為替ヘッジの手数料について説明します。
まず為替ヘッジの仕組みは、一定期間後に決まった為替レートで為替取引を行うこと約束する為替先物取引を使って行われます。
ちょっと色々漢字が出てきて複雑ですね
一定期間後に決まったドル円レートで取引をするというのは例として
「○ヶ月後に、1ドル=○円で交換する約束をする」
というものです。
これを行うことにより、為替が円安や円高に動いたとしても決済される価格は○円だと固定されているので、為替変動に影響されないというメリットがあります。
ただ、これを行う際には手数料である為替ヘッジコストというものがかかります。
為替ヘッジコストは、通貨間での金利差によって有利・不利が発生しない平等性を担保するためにあり、価格は通貨間の短期金利差を用いて決定されます。
具体的には、一定期間後のそれぞれの短期金利を各通貨に適応し、将来の為替レートを計算します。
その将来の為替レートと現在の為替レートの差をコストとして支払うという事になります。
短期金利とは、取引期間が1年未満の金利のことです。金利についてはこちらの記事をご参考下さい。
ここでは例として、日本円の金利が年率1%で、米ドルの金利が年率2%の場合の例を示します。
日本の金利は年率1%なので、1年間運用をした結果、101円に増えます。
一方米ドルの金利は年率2%なので、1年間運用をした結果、1.02ドルに増えます。
そして、1年後の為替レートを計算すると1ドル = 99.019円という計算になります。(緑の枠)
よって、1ドル=100円でドルに変換した後に1ドル = 99.019円で円に戻すので、少し円高になった計算となるので
99.019 ÷ 100 - 1= – 0.981% となり
-0.981%(0.981円)のコストが掛かります。
逆に日本円の金利が年率2%で、米ドルの金利が年率1%の場合の例を示します。
日本の金利は年率2%なので、1年間運用をした結果、102円に増えます。
一方米ドルの金利は年率1%なので、1年間運用をした結果、 1.01ドルに増えます。
そして、1年後の為替レートを計算すると1ドル=100.99円という計算になります。(緑の枠)
よって、1ドル=100円でドルに変換した後に1ドル=100.99円で円に戻すので、少し円安になった計算となるので
100.99÷100 -1= + 0.99% となり
+0.99%(0.99円)を逆に受け取ることができます。
これは費用ではなく、収益となるため為替ヘッジプレミアムと呼ばれます。
金利の大小でより簡単に理解するためには
「金利が高い通貨は有利である」
とうことを覚えてもらえるといいと思います。
金利が高い通貨が有利である例として以下に2つの通貨があるとします。
- 1年間もっているだけで、2%増える通貨A
- 1年間もっているだけで、1%増える通貨B
あなたならどちらの通貨が欲しいですか?
もちろん、1年で2%増える通貨Aが欲しいはずです。
これが金利が高い通貨が有利である理由です。
よって
外国の短期金利 > 日本円の金利 → 日本円が不利
→ 為替ヘッジコストを支払わなければいけない
外国の短期金利 < 日本の金利 → 日本円が有利
→ 収益(為替ヘッジ・プレミアム)を受け取れる
と理解するといいと思います。
為替ヘッジのメリット・デメリットとは?
最後に、これまでの説明を踏まえて、為替ヘッジあり・なしの時のメリット・デメリットを以下にまとめます。
- 為替変動リスクを抑えられる
- 取引通貨の短期金利が日本円の短期金利より低い時、為替ヘッジプレミアムを受け取れる。
- 円安になった時にその分の利益を得られない
- 取引通貨の短期金利が日本円の短期金利より高い時、為替ヘッジコストを支払う。
為替ヘッジは、為替変動のリスクを抑えることができますが、逆に円安になった際の利益も失われるというデメリットもあります。
とはいえリスクは抑えられるので、安定的な投資をしたい人は為替ヘッジを利用するべきです。
次に、取引通貨の短期金利が日本円の短期金利より低い時に、為替ヘッジ・プレミアムを受け取れると書きましたが、日本はマイナス金利政策を行ったことも有名であり、世界の中でも金利が低い国です。
日本より短期金利が低い国といえば、思いつくところドイツやデンマークなどが挙げられます。
最近では、米国との金利差が縮まって来ていることが注目されていますので、こちらについても近いうち記事を書きたいと思います。
まとめ
今回は、投資信託を選ぶ上で重要な為替ヘッジについて解説をしていきました。
海外の金融商品を購入する際には為替変動リスクが伴うため、それをなくすために為替ヘッジを行うことを説明しました。
また、取引通貨との短期金利の差によっては手数料を払ったり、受け取ったりすることができるので、今後の為替市場の未来を予想しながら為替ヘッジを検討するとよいでしょう。
今後も、投資・経済の勉強に役に立つ記事を書いていきますので、どうぞ宜しくお願いします!
それでは、最後まで記事を読んで頂きありがとうございます。
残り一日良い一日をお過ごし下さい!